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ここリカ・プロダクションのメールマガジン第139号

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ここリカ・プロダクションのメールマガジン

第139号

(2025年12月5日発行)

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本メールマガジンは、公益財団法人北海道精神保健推進協会が運営するメディア事業所

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毎月一回配信予定です。

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1. 伊藤の創作論:逆襲の絵画編(伊藤)

2. OASISと私、そして“ここプロ”へ(田中)

3. 編集後記(咲)

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1. 伊藤の創作論:逆襲の絵画編

絵に限らず、一定の技術を身に付けると、同時に一定の審美眼が身に付くものです。

そして多くは上ばかり見るようになり「自分はまだまだ」という考えから逃げることが出来なくなります。

伊藤なんぞは極端な例で、障碍特性から自分の常識全てを否定されたその時、唯一否定されなかった絵の腕にすがり付いたのです。

「認められよう、褒められよう」ではない。

自分が「普通以上」になって、自分を笑った「普通」の人間を「普通以下」にして笑ってやる。

これは逆襲でした。

趣味でしかなかった絵が逆襲の道具になり、上達を求め、限界を知るほど描くことが楽しくなくなっていく。

ある日、絵を本気で描くことを止めました。

上達や不完全性から目を背け、描いていて楽しい部分だけやる。

ヒトに見せて評価されようなどと思わない、自分が良いならそれで良し、そんな描き方。

逆襲に使えない役立たずでしかなかった自分の絵が、やっとまた好きなものになれた瞬間でした。

絵は特技と胸を張らず、趣味。

楽しいと思うことを第一にやろう、嫌なものからは逃げてしまえ、楽しさが上回ったとき、やっと立ち向かえ。

これが伊藤が、忘れちゃいけないと思っている創作論です。

しがらみから解放されようぜ!とかいう綺麗事をぬかしている訳ではありません。

伊藤は別に嫉妬や自己否定のトラウマを乗り越えてはいない。

今も、絵画教室も自分より絵が上手い奴も基本的に嫌いです。

この創作論も未だ「逃げ」だと思っています。

だけど、自分の絵が世界で一番好きだと言いたいよね、絵を描くことが好きだ、と言える状態でいたいよね。

その為なら、逃げてもいい。

人生はそうであってもいいな、それも許される世の中であってほしいな、と思う、そういう話でした。

(伊藤)

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2. OASISと私、そして“ここプロ”へ

2024年8月にイギリスのロックバンドOASISが再結成を発表した。

そのニュースは私の心を強く動かした。

私は音楽を聴くのが好きだ。

その目覚めは約15年前、中学生のころ、当時嫌いな同級生がいた。

先生の前ではかしこまった優等生だが、気に入らない同級生には暴君のように振る舞う。

ターゲットになった私は目を合わせないよう、いつも下を向いていた。

人の目を気にせずいられるのは家の中だけ。

鬱憤を晴らすようにテレビに映るサッカー選手を全力で応援した。

なりふり構わずボールを追いかける彼らが、とても自由に見えて羨ましかった。

好きなサッカー選手のことを調べていたら、好きなバンドがOASISと記されていた。

興味本位で聴いてみたら、とにかくメロディに惹かれ、過激な発言も刺激的だった。

誰に何を思われるかより、“ありのまま”自分の気持ちを表現する、そう生きてみたいと思った。

メロディや歌詞が自分の気持ちを代弁してくれている気がした。

しかし、魅力を知ったときには度重なる喧嘩の末、既に解散していたため、ひどく寂しかった。

寂しさを埋めるようにOASISが影響を受けたイギリスのバンド(ビートルズ、ザ・スミス、ザ・ストーン・ローゼズ)、その他にもアメリカのバンドなど、たくさんの洋楽や邦楽を聴き漁った。

それからは寂しいとき、悲しいとき、楽しいとき、嬉しいとき、どの瞬間にも音楽がすぐ傍にいてくれるようになった。

音楽は自分が生きていくために欠かせないものになった。

そのうち何か想いを表現しているものに興味が出て、映画やドラマも大好きになった。

私にとってOASISは自分の“好き”を広げてくれた存在。

自分を嫌いになりそうなとき彼らはいつも語りかけてくる、お前の人生を代わりに生きてくれるヤツはいないだろ、だからお前は最高なんだぞ、と。

そうすると強くなった気になり、自然と顔を上げて大手を振って大股で歩いて行ける。

そんな思い入れのあるOASISが再結成して、東京ドームでのライブを行った。

ありがたいことにチケットが当選し、15年越しに初めてライブを体験できるという夢のような時間を過ごすことができた。

15年の感謝と、これまでの人生が走馬灯のように流れながら、あの場の一期一会の仲間と大合唱した。

仲間と語り、写真を撮りあい「ありがとう」を伝えあう、熱く、厚い時間だった。

あの頃OASISに救われ、今年東京ドームで初めてライブを観ることができて、やっと思春期が終わったように思う。

これまで生きやすくなるために、人との関わりを通して傷つきながらも自分を深く理解しようと努めてきた。

その延長線上に精神保健福祉士となった今がある。

私に向かって、顔を上げた中学生の自分が「ありがとう。Don’t look back in anger!(怒りをもって振り返らないで)」と微笑んでくれている気がする。

これから近い未来に、ここプロの活動が、外に飛び出して力を合わせる姿が、“ありのまま”が誰かの心と身体を温め、より多くの人にとって傍にある “オアシス”になりますように。

(田中)

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3. 編集後記

とうとう12月になり、冬の気配に身構えるころになりました。

が、肝心の雪は降れども積もらず、やきもきする時期ですね。

さて今月は偶然にも「情熱」に関する2本立てとなりました。

自分で自分を認めよう、と言葉にするのは簡単でも、それは心に「火」がないと難しく思えます。

伊藤さんの火は噴き上がる灼熱、田中さんの火はグツグツ煮えたぎる溶岩湖のようで、まるで好対照です。

2人の苦しみと試行錯誤が垣間見えて、この先で火が違う姿になっても、熱だけはずっと持ち続けてほしいと願わずにいられません。

ところで…皆さんの火は何ですか?どんな姿をしていますか?

(咲)

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